肥満細胞腫〜MCT
治療方法

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「小さいときに、大きく取る」のが完治への唯一の道
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「しこり」が小さいあいだに外科手術でその「しこり」とその周囲3センチメートルほどの範囲を切除する。


外科治療
 腫瘍の発生した部分が広範囲に切除可能な部分であれば、手術により摘出するこの方法が第一選択。
 いかに小さな腫瘍でも、腫瘍の周囲の正常な組織を少なくとも3cmの余裕を持って広く深く切除を行うことが必要である。

 というのは、腫瘍細胞はしこりになっていなくても、周囲の組織に散在しているからで、どれだけ広く切除するかは「機能障害が出ない程度で可能な限り広く」ということが基本である。
 それらの腫瘍細胞を取り残せば手術箇所に再発する可能性が高くなり、さらに再発した部分の再手術は非常にやりにくい上に再発までの間で腫瘍細胞はさらに広範囲に広がってしまうことも考えられるため、初回の手術でできるかぎり広範囲に切除することが重要である。

 外科療法は、腫瘍の肥満細胞が良く分化しており(低グレード)、他の部位への転移がなく、取り残しせずに切除が行われれば完治が可能になる唯一の治療方法である。
 また、取りきれないほどの大きな腫瘍にしても、できるだけ腫瘍を切除することにより、肥満細胞からの脱顆粒が減少し、それに伴って生じていた合併症が軽減する効果もある。
 切除した組織の病理組織検査結果から、正式な分化程度(グレード)、切除した断面近辺にも腫瘍細胞が存在していないか(マージン)がわかる。
 これらの情報は、その後の治療にとって必要不可欠であり、十分な広さを持って腫瘍の切除ができない場合には(大きく広がりすぎた腫瘍、四肢の先端、包皮、会陰部など)、最初からきれいに取りきれないであろうことを考慮に入れて、術前や術後に他の治療方法(放射線、化学療法)を組み合わせる場合もある。

 犬の場合、外科手術だけの治癒率は41%以下のため、外科手術のあと、患部周辺の放射線治療や化学療法をおこなうのがより効果的である。 


■ 放射線療法 ■
 肥満細胞腫は放射線による効果が比較的良好である。
 
 放射線療法の特徴のひとつとして、放射線を照射した部分にしか有効性がないため、この治療方法を用いるにはある特定部分にのみ存在している限局性の腫瘍の場合にのみ適用される。
 また、利点として外科手術が不可能な部位や、断脚等を行いたくない、体の機能を残しながら有効な治療を行いたいという場合に適している。
例えば、顔面、四肢、包皮、会陰部などに発生した腫瘍である。
 また、あまりに大きな腫瘍塊では放射線に対する効果がでにくく、放射線を照射することによって死滅した肥満細胞から大量の顆粒が放出され重度な副腫瘍症候群が発生する場合もあるため、照射前に外科手術を行って腫瘍サイズを小さくしてから行うこともある。

 放射線療法は非常に有効な手段ですが、この方法のみで完治するのは難しい。
 

化学療法
 抗がん剤やステロイドを使用して内科的に治療する方法である。
 しかし、残念ながら現在のところ肥満細胞腫に「非常に有効である」という抗がん剤はなく、そのため、他の腫瘍に用いられるさまざまな組み合わせの抗がん剤等を使用して治療が行われている。
 
 抗がん剤による副作用として、消化管粘膜が障害による、食欲が低下し、下痢・嘔吐、また、骨髄の造血細胞が傷害されると白血球や血小板が減少して免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなったり、出血しやすくなる。

 しかし、犬の場合人よりも副作用は出にくく、大部分の犬は薬剤を投与している間でも快適な生活が出来るといわれている。

 ステロイド(副腎皮質ホルモン)は
1)炎症に関係する血液細胞の炎症部位への侵入を抑制する作用
2)免疫機能を抑制する作用
3)炎症に誘発するプロスタグランジンやロイコトリエンが作られるのを抑える作用
があるとされ、腫瘍の治療にも広く使われている。
 副作用として、免疫力の低下、食欲増進による肥満、多尿・多飲などがあるが、慎重に使いさえすれば、これほど病気の動物のQOL(生活または生命の質)を向上させる薬は無いといってもよい。






 
がんばる あ〜しゃ