肥満細胞腫〜MCT
予後を予測する指標

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肥満細胞腫は悪性の分類に入るやっかいな腫瘍
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同じ肥満細胞腫でありながら肥満細胞の分化程度、腫瘍発生部位・大きさ等により選択できる治療方法、生存率にかなりのばらつきが生じる。
予後を予測する指標には色々な項目がある。


組織学的グレード
 グレード分けは病理組織検査がでされ、分類は最も重要で、予後予測の有力情報となる。 

グレードT 高分化型の肥満細胞、低グレード・顆粒が多い
グレードU TとUの中間の分化程度
グレードV 未分化型、高グレード・顆粒が少ない

 高分化型(グレードT)のものは特定部位に明確なしこりのような固まりができることが多く外科治療などによる腫瘍摘出により完治する可能性が高い。
一方、顔つきが明らかに悪い肥満細胞腫が散在していて、腫瘍の範囲が分からないもの(未分化型)は、悪性度が極めて高く、再発・転移が多く完治が難しくなる。

臨床ステージ
 腫瘍の近くのリンパ節や、離れたリンパ節・臓器への転移がなく、皮膚にのみその腫瘍が存在している場合には転移している場合と比較して予後は良好となる。

 ステージ分類は、皮膚に発生した肥満細胞腫の個数や大きさ、その広がり方(周囲とはっきり区別できるのか、それとも境界が不明瞭なのか)、リンパ節や他の臓器への転移の程度や有無などにより区別される。

ステージT 真皮に限局した1つの病変で、完全な外科的切除が可能である;
転移や関連する全身性疾患の兆候は認められない。
ステージU 真皮に限局した1つの病変で、所属リンパ節に波及している。
または、真皮に限局した複数の病変で、完全な外科切除が可能である;
転移や関連する全身性疾患の兆候は認められない。
ステージV 多発性の皮膚腫瘍、再発性疾患、または大きな浸潤性の腫瘍で、所属リンパ節への波及がみられたりみられなかったりする;
遠隔転移や関連する全身性疾患の兆候は認められない。
ステージW 遠隔転移や転移を伴う再発が見られる腫瘍のすべて。外科的切除、放射線療法には反応しない。
関連する全身性疾患の兆候が認められる。



■ 位 置 ■
 包皮周囲、会陰部、爪下、肛門周囲、その他の粘膜皮膚部位ではより未分化の腫瘍が発生し予後不良となりやすい。
 内臓、骨髄では非常に悪くなる。


■ 成長速度 ■
 数ヶ月〜数年という長い間同じような状態で存在するものもある。
大きく成長しないものは普通良性である。


 犬 種 ■
 ボクサーの肥満細胞腫は高分化型であり、予後は良好な場合が多い。


■ 全身症状 ■
 全身の症状、例えば食欲不振、嘔吐、胃腸の潰瘍、黒色便等が存在する場合は、より攻撃的な悪性度の高い肥満細胞腫である。
 (肥満細胞腫によってもたらされる合併症、副腫瘍症候群の発生により全身状態が悪化していると考えられる)


 
がんばる あ〜しゃ